“施設職員時代に地元の長崎で開催された学会で、寝たきりの子どもたちを起こす椅子作りの話をしたところ、フロアーの医師から「素晴らしい仕事だと思うが、あなたには起こす権利があるのだろうか?」という質問が飛び出した。このことはいつも仲間たちと繰り返し確認していたテーマだったので、慌てることなく「僕たちに起こす権利があるかどうかはわかりませんが、人は誰もが起きて生活をする権利を持っていると思います。その手助けをしているだけです」と答えたところ、場内から大きな拍手を頂いた。 また、厚生省(当時)の障害福祉課の課長に就任した浅野史郎さん(後の宮城県知事)が、勤務していた施設を訪問し、からだに合わせた椅子によって起きて生活できる機会が増えている状況を大いに評価していただき、1989年に厚生省で「起きる権利」と題して、その当時の活動を紹介させられた。 勤務していた施設の中で、大きな変化が起こってきた。寝たきりに近い状態の子をうまく坐らせることができると呼吸が楽になっていることを医師や看護師が確認し、介護職員たちも誤飲が少なくなって食事がうまくいくことに気付く。頸が据わらなかった子がいつの間にか安定して坐ることができるようになる。そんな事例が少しずつ増えていくと、椅子に坐わらせて食事をすることが当たり前の状態になっていき、その介助がしやすいようにという要望も出てきた。 介護職員のスキルも寝たきりの子を上手に扱えることから、起こす介護へと変わっていった。まさしく介護の世界のパラダイムシフトが起こったのである。”
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